今回は、経営者のための「マネジメントとリーダーシップ」についてのお話をしていきたいと思います。ビジネスの世界では、「マネジメント」と「リーダーシップ」という二つの用語がしばしば使われますが、これらの間には重要な違いがあります。
この記事では、それぞれの定義から始め、具体的な役割、効果的な組織運営におけるそれぞれの重要性、さらには相互作用について掘り下げていきます。
マネジメントとリーダーシップ、それぞれの定義と役割

まず、マネジメントは、アメリカのマネジメント協会によれば、「人を動かし、仕事を行う技術」と定義されています。この定義からも明らかなように、マネジメントの核となるのは「統合」と「遂行」です。その為、マネジメントは、組織の目標に向かって、リソースを効率的に配分し、プロセスを管理し、日々の業務を円滑に遂行することを目指します。
つまり、マネジメントの主な任務は、計画立て、組織化、人材の配置、指導、およびコントロールです。一方でリーダーシップは、「人を導く」という能力に重点を置いています。リーダーシップは、単に目標を達成するための指示や命令を超え、ビジョンを共有し、他人を啓発啓蒙し、変革を推進する能力を含みます。リーダーシップは、人々が最高のパフォーマンスを発揮できるように動機付け、支援し、インスピレーションを与えることに重点を置いています。優れたリーダーは、自らのビジョンを持ち、それをチームに共有し、チーム全体で目標に向かって努力する環境を作り出します。
つまり、マネジメントが「事を成す」ことにフォーカスするのに対し、リーダーシップは「人を動かす」ことに焦点を当てています。マネジメントは構造、システム、プロセスに関わり、リーダーシップは人の心に訴え、感情と価値観を重視します。具体的には、マネジメントは目標達成のための「仕組みや道具」を最適化することに関与し、リーダーシップはその目標に到達するために「人々を鼓舞する」役割を果たします。
マネジメントとリーダーシップの対比

マネジメントとリーダーシップについて、さらに深く見ていくと両者には3つの大きな違いがあります。
1つ目が「必要とされるタイミングの違い」です。
リーダーシップとマネジメントは、必要とされる場面やタイミングにも違いが見られます。リーダーシップが必要とされる場面の例としては、主に新たな事業・プロジェクトをスタートするときや、組織が停滞しているときなどが挙げられます。新たなプロジェクトや事業のスタート段階では、メンバーがなにから手をつければよいのかが分からず、漠然とした不安を抱くことも多いものです。
そこで、組織やチームが目指す大まかな方向性を示すことで、具体的なビジョンをメンバーが理解できるようになります。一方、マネジメントが必要とされるタイミングは、組織やチームとして目指すべき方向性が明確に定まった後、その目標を確実に達成したいときです。現状を正確に把握することで、目指すゴールに対してなにが不足しているのかが明確になり、メンバーはとるべき行動が論理的に理解できるようになるでしょう。
2つ目が「求められる視点の違い」です。
リーダーシップは組織を正しい方向に導いていく必要があるため、中長期的な視点が求められます。たとえば、3年後、5年後といったスパンで組織をどう変革していくか、そのためにどのような人材を育成していくべきか、といった視点が求められるでしょう。これには組織目標の設定や、環境の整備なども必要になります。
これに対しマネジメントは、長期的な視点と短期的な視点の両方が求められます。組織が示す方向性やビジョンを正しく理解したうえで、目標を達成するためにどのような人材育成プランを立てるべきか、経営資源をどのように配分するか、組織をどのように維持・調整すべきか、といったこともマネジメントでは検討しなければなりません。
最後に、3つ目が「影響要因の違い」です。
リーダーシップは、リーダーの人格や考え方、価値観などによって周囲に与える影響力が変わってきます。たとえば、経営者や管理職といった肩書きがあるからといって、無条件にリーダーシップを発揮できるとは限りません。反対に、肩書きがなくてもリーダーシップを発揮できる人材は存在します。
すなわち、部下やメンバーを強制的に従わせるのではなく周囲の人から信頼されるリーダーになれるかどうかは、リーダー本人の人望や人格のほか、その人の行動とそれによって導かれる結果など、どれだけ人を納得させられる要素やスキルを持っているかによって決まるということです。これに対しマネジメントは、地位や肩書き、職務の権限などに影響されることが多いという特徴があります。
さまざまな経営資源を効率的に管理・活用しながら、企業としての目標やミッションの実現を目指すためには、特定の権限や役職をもっておいたほうが物事を円滑に進められるためです。
マネジメントとリーダーシップを発揮するために必要なスキル

マネジメントとリーダーシップは相互に補完し合う関係にあります。優れた経営者リーダーは、効果的なマネジメント技術を用いて、そのビジョンを現実のものとします。また、リーダーシップにおけるビジョンとマネジメントにおける戦術が一致することで、組織はその潜在能力を最大限に引き出すことができます。
そこで、ここで改めて、マネジメントを発揮するのに必要なスキル、リーダーシップに必要なスキルをまとめて見ていきたいと思います。ここで今一度、ご自身に足りないスキルを確認して、能力開発の参考になさってみてください。まず、マネジメントは、一言でいえば、組織の人間が効率良く仕事をできるために管理・サポートすることです。その為、次のような4つのスキルが主に必要です。
①管理調整能力:組織の成果を上げるためにあらゆるものを管理し調整する能力のことです。
②状況把握力:あらゆる状況を的確に把握して、その状況に対して効果的な方策を取れる能力です。組織の問題に対して冷静で客観的な分析ができる能力とも言えます。
③コーチング力:部下や後輩を指導して、能力を引き出すことをコーチングと言います。マネージャーは管理職として、コーチングを行う機会が増えますし、次なる人材を育成するためにもコーチング力は必要です。
④論理的思考能力:あらゆる物事の原因と結果を分析し、論理的に解釈したうえで自身の管理・経営に活かす能力です。感情にとらわれない冷静で客観的な判断をするために必要な力とも言えます。
次にリーダーシップを発揮するために必要なスキルをいくつかあげます。リーダーシップとは、一言でいえば、組織の目標・目的を設定して、その目標に対して周りを動機づけ、導く力のことです。そのため、リーダーシップを発揮するためには、次の5つのスキルが必要になります。
①目標設定力:組織の力量と将来性を鑑み、モチベーションを高く保ちながら組織を維持できるような目標・目的を作ることができる能力です。
②先見性:時代の流れや変化を敏感に感じ取り、先を見据えて組織を動かすことのできる能力です。ビジネスにおいては事業のヒント、アイデアを思いつける力とも言えます。
③意思決定力:あらゆる状況に応じて適切な判断を即座にできる能力です。課題や問題が発生した時に、組織の動くべき方向性を指し示し、決断するのはリーダーの役割です。
④俯瞰力:物事の全体を見て、客観的に分析し本質を見る能力です。第三者目線をしっかり持つことで、組織の腐敗や形骸化を防ぐ効果もあります。
⑤素直さ誠実さ:リーダーはあらゆるビジネススキルだけでなく、人間性が重要視されます。周囲の人間の信頼に足るような存在でなければ、組織は動かすことができません。スキルとともに人間性も磨いていきましょう。
マネジメントとリーダーシップ、組織運営における相互作用

先ほども触れたようにマネジメントとリーダーシップは、異なる機能を持ちながらも、組織の成功には互いに補完し合って均衡を保っています。
例えば、Apple社の創設者であるスティーブ・ジョブズは、彼のビジョンと革新的なアイデアによって世界を変えるリーダーシップを示しました。彼のリーダーシップは明確なビジョンの提供と強烈な情熱をもって周囲を鼓舞することに重点を置いていました。
しかし、彼のビジョンを実現するためには、効果的なマネジメント戦略が必要で、このため、彼はティム・クックのような優れたマネージャーを起用し、複雑なオペレーションや供給チェーンを管理し、製品開発を現実のものとしました。この事例からわかるように、リーダーシップが方向性を示し、マネジメントがその方向性に沿って日々のオペレーションを整理し、具体化する役割を果たします。
リーダーシップは「なぜやるのか」を明確にし、マネジメントは「どうやるのか」を体系的に策定します。さらに、効果的なマネージャーがリーダーシップの要素を取り入れることで、チームのモチベーションを高め、組織全体の士気を向上させることができます。
例として、Googleでは従業員が自身の20%の時間を自由にプロジェクトに割り当てることができる「20%ルール」というものがあります。この制度はマネジメントの枠組みの中で運用されていますが、創造性とイノベーションを促すリーダーシップの原則に基づいています。このように、マネジメントの精度を高めつつ、リーダーシップによるビジョンと動機付けが一致することで、組織はその潜在能力を最大限に引き出すことが可能です。
この相互作用は、日々の業務の効率性を保ちつつ、長期的な成長と革新を達成するために不可欠です。結局のところ、マネジメントとリーダーシップの両方がうまく組み合わさることで、組織は持続可能な成功を収めることができるのです。
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