今回は、相手を理解するための傾聴が難しい理由とその克服方法についてお話していきたいと思います。相手の話をしっかり聞くことは重要だということは分かっているのですが、実際にそれを実行して、ちゃんと相手の言いたいことを理解するのって意外と難しいですよね。今回は、その理由と具体的な改善策をお話していきます。それでは参りましょう。
傾聴が難しい3つの大きな理由
1つ目の傾聴が難しいと感じる理由は、私たち人間は、自分の話をしたいという強い欲求を持っているからなんです。これは自己表現の重要な一部であり、自分自身を他人に理解してもらいたいという願望からきています。
人は社会的な存在であるため、自分を表現し、他者からの反応を通じて自分自身を確認することを重要な活動と無意識に位置づけています。この行動の背後には心理学的な要因が関係しています。具体的には、自己開示の欲求が関与しています。これは、人々が自分の経験や考え、感情を他者と共有することで、承認や認知を求める心理状態です。自分の話をすることで、聞き手からの肯定的な反応や支持を受け、自己信頼、自己の価値を高めることができると期待するからです。
2つ目の理由は、「先入観や偏見」が関係しています。これは、相手の話を聞く前から自分の中にある思い込みや予め決めつけてしまうパラダイムのことで、本当の意味で、相手の言葉を理解できなくなる状況をつくりだしていることもあります。
例えば、ある人が話し始めた瞬間、その人の外見やこれまでの経験から「こんな意見を持っているに違いない!絶対に!」と決めつけてしまうことです。心理学では、これを「確証バイアス」と呼びます。確証バイアスは、認知の偏りのことで、自分の信じていることを支持する情報だけを受け入れ、それに反する情報は無視したり、歪めて解釈する心理的傾向です。
このバイアスが働くと、自分の意見や信念を確認したいという欲求が優先され、相手の意見や新しい情報に対して閉ざされがちになります。これが傾聴において問題となるのは、本来、傾聴の目的は相手の話を完全に理解し、その人の感情や意見に寄り添うことにあるためです。先入観や偏見により、相手の言葉が自分のフィルターを通じて歪められてしまうと、真の意味でのコミュニケーションが妨げられます。したがって、傾聴する際は、自己の内面にある先入観や偏見に気づき、それを一時的に脇に置く努力が求められるのです。このプロセスを通じて、相手の話を新鮮な目で、公平に受け止めることが可能になります。
3つ目の理由は、「適切に質問ができない」という点です。傾聴を心掛けていても、質問の仕方が不適切だと、相手に詰め寄るような調子や誘導尋問になってしまうことがあります。
過去にそう感じたことはありませんか。例えば、何気なく発した質問でも「忙しいのに、なぜ、趣味の時間を作ろうと思ったの?」という質問なんかは、相手にプレッシャーを感じさせてしまうかもしれません。状況にも寄りますが、この質問は、暗に「忙しいのにどうして趣味に時間を割くのか」という批判的な意味合いを持ちかねません。
質問する側は、ただ理解を深めたいと考えているかもしれませんが、言い方次第で相手に不快感を与え、自己否定の感情を抱かせる結果になることもあります。
相談者自身は単に「趣味がストレス解消になるから」とか、「何か新しいことを始めたくて」といった自分なりの合理的な理由を持っていることが多いです。しかし、思慮深さに欠けた不適切な質問は相手を追い詰めることにつながり、結果として真の気持ちを引き出すことができなくなるかもしれません。
質問を通じて相手の心を解放するためには、よりオープンで、ポジティブなアプローチが求められます。これにより、相談者は安心して本音を話すことができ、解決に向けて前進する手助けとなるでしょう。
ロジャースの傾聴の3原則
カール・ロジャーズは、心理学におけるカウンセリングの父とされ、彼が提唱する傾聴には三つの基本原則があります。「共感的理解」、「無条件の肯定的関心」、「自己一致」がそれにあたります。
「共感的理解」は、相手の話をその人の視点から理解しようとすることです。これは単に相手に同意することではなく、同情することでもありません。相手の感情や状況を自分のものとして感じ取り、その人の価値観や考えを尊重することにより、深い他者理解を目指します。
「無条件の肯定的関心」は、相手の話に対して常に肯定的な関心を持つことを指します。たとえ自分の意見と異なる場合でも、相手の立場や背景に敬意を持ち、その発言を無条件で受け入れることが求められます。これにより、相手は自分の考えを安心して共有できる環境が整います。心理的安全が確保されるのです。
「自己一致」は、聞き手が相手の話の意図や本質を正確に理解し、それに基づいて反応することを意味します。相手の話に不明点がある場合は、それを直接確認し、相手の本当の意図を理解するよう努めます。これらの原則は、対話の中で相手を深く理解するために非常に重要であり、日常のあらゆる人間関係の構築においても非常に有効です。
傾聴6STEP
では実際にどのように相手を理解するための傾聴をおこなったらいいのでしょうか。ここからは、傾聴の具体的なやり方を簡単にご紹介します。
STEP1:目的を確認する。最初に会話や面談の目的をしっかり確認することで、相手との間で認識のずれが生じることを防ぎます。目的が分かると相手も安心します。そうして相手が発言しやすい場を整えることで、会話や面談をスムーズに始めることができます。コンテクストをつくりましょう。
STEP2:ささいなことでも感謝を伝える。感謝を伝えることは、相手に話そうという勇気を与えることにつながります。自分の本音を話すことには少なからずエネルギーが必要です。時間通りに面談に来てくれてありがとう、といったように、「当たり前」と感じることであっても感謝を伝えることから始めてみてください。相手から本音を引き出すことにつながります。
STEP3:相手の感情を汲み取る。感情を理解してもらえると、とても話しやすくなります。たとえば、「悲しかった」「悔しかった」「心配だった」など、感情を表す言葉が出たら、自分もその言葉を口に出して反復すると、相手は安心します。また、相手の声のトーンやしぐさ、表情などから、今の相手の感情を汲み取り、言葉のトーンや話すスピードを調整することも有効です。
STEP4:聴く姿勢・態度に気を付ける。聞き手側の印象をより良いものにすることも重要です。たとえば、対面であれば真正面に座るよりも90度になるような位置に座った方が圧迫感を与えないといわれています。また、腕組みなどはせず、やや前かがみ気味、前のめり気味にすると、積極的に話を聴いていることが伝わりやすくなります。そして、正対します。体ごと相手に向けて視線も相手に向けます。オンライン面談の場合は特に重要なのですが、カメラ目線で、あいづちを打ったり、大きくゆっくりうなずいたりすることも非常に有効です。
STEP5:アクティブリスニングの実践。話を聴いて何度も出てくる言葉や、感情を表す言葉を「伝え返す」ことや、話の先をうながすような聞き方で「それで?」とか「そして?」などの言葉を意識して使うことで、相手が自分を深く考えることができるようにします。話を要約して確認したり、タイミングよくオープンクエスチョンをしたりすることも有効です。沈黙する時間が続くこともありますが、沈黙を怖がらず、次の言葉を待ちつづけることも場合によっては必要です。傾聴は鏡をみせるようなことだともいわれます。自分を深く考えてもらえるように誘導することが重要です。そうして相手の本音や話したいと思っている焦点、問題や課題の真因を明らかにしていくことで、解決の糸口をみつけることができます。
STEP6:課題を分解して協力と目標を一致させる。相手の話を聴きながら、話している課題は誰の課題で、誰が責任を引き受けるのか、という視点で観察し、事実と解釈を分離することで自分と他者を分けて考えられるように促します。そうすると、自分の責任の範囲での目標を自分で決めてもらえるようになります。同時に協力できることを確認することで、よい関係を構築していくことができます。
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